似非恋愛 +えせらぶ+

「大体、私がいつどこのだれと会っていようが、どうでもいいよね? なんで構うの?」
「……何でもだよ、帰った方が良い」
「そんなの斗真に決められたくないっ!」

 私はそのまま背を向けた。

「おいっ」

 背中越しに斗真の制止の声が聞こえたけど、無視して小城君との待ち合わせ場所へと向かった。



「篠塚さん、どうかした……?」

 それから斗真を振り切って小城君と顔を合わせたものの、怒りが収まらず顔に出てしまっていたようだ。小城君が心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「いえ、何でもないの。ちょっといらいらすることがあって……」
「そ、そっか。何かあったらなんでも俺に相談してくれていいんだからね」
「ありがとう」

 小城君の優しい言葉に、少しだけ斗真への怒りが収まった。

「そうそう、眉間にしわなんか寄せてたら、篠塚さんの魅力が半減しちゃうんだから。笑顔、笑顔」
「本当に、小城君は人をのせるのが上手なんだから」

 私は少し笑って、小城君の腕を取って歩き出した。

「さ、行きましょうか」
「うん」




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