似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
「お疲れ様です」
「おう、お疲れーっ」
ビールをジョッキで仰いで、木戸さんはぷはぁと息をついた。
「今日はとことん付き合います。どんどん飲みましょう」
「篠っち、ありがとうな」
今日は、木戸さんを慰めるという名目で竜胆に飲みに来ていた。面子は木戸さんと島田だ。
「くそ……佐川さんが……俺らの佐川さんが……」
なんでもなさそうな顔をしている木戸さんとは対照的に、島田が机に突っ伏して号泣している。
「ちょっと、島田、あんた……空気読みなさいよ」
「いやいや、良いんだ、篠っち。自分より取り乱しているやつを見ると逆に落ち着くというか……」
木戸さんは笑って島田の肩を叩いた。
「だって! 木戸さんならわかりますよ! いい男ですし、憧れてますし、俺なんかじゃあ到底勝てっこありませんし! でも、あの優男だなんて……っ! 佐川さん、男見る目なさすぎですよぉ……!」
子供みたいに泣きじゃくっている島田に、私はため息をつく。