似非恋愛 +えせらぶ+

「はあ、もう、はいはい。勝手に泣いて飲んでなさい」
「篠塚さん、ひどいぃっすぅぅ」

 でも、意外に木戸さんが気落ちしていないようで安心した。

「今回は残念でしたけど、木戸さんならすぐに素敵な女性が現れますよ」
「んー、まあ、しばらくはいいけど……」

 木戸さんは眉尻を下げて曖昧に言葉を濁した。それはそうか、傷ついていないわけがない。
 ただ、大人だからそう見せないようにしているんだ。

 弱っているときでも弱みを見せられないなんて、やっぱり、大人って損だ。

「いやー、でもさ、佐川ちゃん、あいつと再会してから本当に綺麗になったもんな……。悔しいけどさ、そういうことなんだろうよ」
「そうですね……」

 横目で島田を見ると、酒に弱い島田はあっという間に潰れていた。
 単純で可愛いやつだ。

「あーあ、島田のやつ、あっという間に潰れて……」
「まあ、島田らしいっちゃあ島田らしいですね」

 呆れたように言う木戸さんに、私も笑ってしまう。すると木戸さんがおもむろに私を見た。

「で、そっちは」
「え」
「なんか悩んでるんだろ?」

 木戸さんの問いに、私はとっさに口をつぐんだ。脳裏に浮かんだのは言われるまでもなく斗真のことで、今日も斗真からメールが来ていたのだ。
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