似非恋愛 +えせらぶ+
「なんですか、その顔は」
「あのな、篠っち、俺はお前のこと本当に頑張り屋さんで仕事もできるし、めちゃくちゃ評価している」

 突然褒めだした木戸さんに私は首をかしげた。

「……ありがとうございます……?」
「でもな、馬鹿、お前は男心が全く持って何もわかっちゃいない」

 それがわかったら苦労しない。

「前にも言ったけど、男ほど単純明快な生き物はいねぇんだよ。お前の幼馴染は単純に、篠っちのことが好きなんだよ」

 木戸さんに言われた言葉を理解するのに、ゆうに数十秒を要した。

「私のことが、好き……?」
「そうだよ、どう考えたってそうだろうが」
「そうですよぉ~……ぐー……」

 寝ぼけた島田の言葉に、木戸さんがぺしっと島田の頭をはたく。が、全く起きる様子はない。

「ったく、こいつは……」

 いや、ちょっと待って、斗真が、私のことを……?

「え、き、木戸さん? だって……そんなわけ……」

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