似非恋愛 +えせらぶ+

「篠っちがそれでいいなら、俺だって何も言わねぇよ」
「そうじゃなきゃ、駄目なんです」

 私達は、幼馴染みでいるのがいいんだ。付き合って別れてしまったら、斗真を一生失ってしまうのだから。
 そんなのは嫌だ。

「ほんと、あんまり深く考えすぎずにさ、たまには自分の感情に素直になってもいいじゃねぇ? この年になるとなかなか難しいけどさ」

 自分の感情に、素直に……。

「なんか年取るとさ、なんでもわかったふりして諦めぐせがついて、傷つくのがすげぇ怖くなるけどさ……。それって、結局自分の心に嘘ついて、自分傷つけてるだけなんだよな。少なくとも佐川ちゃんのことに関して、俺は後悔してない。自分の感情に素直に従った結果だからな」

 慰めるように言う木戸さんの言葉は重くて、私の心に響いた。

 木戸さんを慰めるための会だったはずなのに、いつの間にか私が慰められてしまっている。

「木戸さん、ありがとうございます」
「篠っちもありがとな」

 それから私達は他愛もない話をして、お酒を美味しくいただくことにした。









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