似非恋愛 +えせらぶ+

 確かに、腑に落ちるんだ。
 斗真が私のことを好きだったとしたら、わざわざ私に会いに来てくれたり、こうしてメールをよこしてくるのも、説明がつく気がした。
 親に嘘をついた理由も、本当は周りから固めようとしていたとしたら……。そう考えると、嫌になるくらい斗真の行動の説明がついてしまう。

 でも、これが私の自惚れだったら。勘違いだったら。

 私はもう、立ち直れない。
 斗真という幼馴染みを失うことになると思う。

 斗真に返信を打とうとする指が震える。

『私のこと、どう思ってるの?』

 そんな文章を作ってから、消した。

 聞きたくないし、訊けなかった。
 そんな勇気はない。

 いっそのこと、確かな言葉を斗真から聞ければ……とも思うけれど、そんな勇気もなかった。

 それに、斗真に好きと言われたら……いったい私はどうするのだろう。
 私は小城君と向き合おうとしている。斗真とは幼馴染みでいたいんだ。

 斗真とは終わりのある関係に、なりたくないから。

 でも、もしも、斗真が本当に私を好きなら、私達はもう幼馴染みでいられない。
 たとえどんな答えを私が出そうとも。

 私と斗真が幼馴染みでいるための方法がなくなってしまう。


 どうすればいいのか、まったくわからなかった。

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