似非恋愛 +えせらぶ+
「なんか、待たせちゃってごめんね」
「ううん、よくあることだから、大丈夫だよ。俺もこれ金庫にしまって、帰るし」
私も立ち上がって荷物を持つと、小城君がちらっと私を見た。
「篠塚さん、待っててくれる? 一緒に帰ろう?」
「えっ、うん、もちろん」
「じゃあ、ここで待ってて」
小城君が奥の部屋に行って準備している間、私はぼんやりスマホを眺めていた。あれから、斗真のメールに返信をしていない。それでも、斗真からのメールは続いている。
「はあ……」
「やっぱり、なんか悩み事?」
「きゃっ!」
ぼんやりしているところに小城君に声をかけられて、私は飛び上るほど驚いてしまう。
「そんなに驚くことないのに。やっぱり、篠塚さん、今日ずっとぼんやりしてる」
「そ、そんなことは……あるかも」
「素直でよろしい。じゃ、とりあえず行こうか」
小城君に続いて、私はお店を後にした。
「で、篠塚さんはいったい何に悩んでるの?」
小城君が優しい口調で訊いてくる。だけど正直、小城君には言いづらい。
「えっと……」
なんて説明すれば誤解を生まないだろうか。