似非恋愛 +えせらぶ+
「篠塚さんはそうしてる方が良い。何か悩んでるのはやだから、いつでも俺に言ってね」
「優しすぎるよ、小城君は」
「俺のこと、好きになっちゃった?」
黒縁メガネの奥の小城君の瞳が妖しく細められる。あ、これは、男の人の眼だ。
「はやく、俺に堕ちてくれてもいいんだよ」
にこっと笑う小城君が色っぽくて、心臓がばくばくいう。口から心臓が出てしまいそうなくらいドキドキしている。
「あ、あの……」
「あれ……?」
「え?」
突然、小城君が遠くを見て首をかしげた。私もそちらに視線を向けて息を呑んだ。
「やっぱり、気のせいじゃないかな……。俺、あの人いつも見かける気がするんだよな……」
「……え、嘘でしょう?」
少し離れたところから、こちらをじっと見つめてるのは、真治だった。
「ちょっと待って、い、いつもって?」
小城君の言葉に、私は混乱する。