似非恋愛 +えせらぶ+
フェーズ11
恋心
呆然としている私と小城君に、もがく真治を取り押さえている斗真。状況が分からず、ぽかんとしていた私だったけど、あわてて刃物を遠くに蹴り飛ばした。
「警察……っ!」
「あっ、はい!」
斗真が大声で警察を呼ぶようにいい、小城君が慌ててスマホで警察を呼んだ。その後、小城君も真治を取り押さえる。
さすがに男2人にはかなわないと思ったのか、真治は抵抗をやめた。
しばらくしてパトカーが到着し、真治が連行された。小城君が何があったかを、警察の人に説明してくれている。
震えが、止まらない。何が起きたのかわからず、脳みそが大混乱を起こしている。
「香璃」
腰を抜かして座り込んでいる私に、斗真が手を差し出した。私は、何も考えずにその手を取った。
その瞬間、私は斗真に抱きしめられていた。
「心配させるな、馬鹿……」
その瞬間、私の眼から涙があふれ出た。
「斗真ぁ……っ、こわ、怖かったぁ……っ」
斗真の腕の中で安心してしまって、緊張の箍が外れ、私は泣き出してしまった。