似非恋愛 +えせらぶ+
「これ、飲めるか?」
はっとして顔を上げると、斗真がマグカップを持っていた。匂いからしてココアだ。
「ありがとう……」
私はマグカップを受け取って、手の震えが治まっていることに気づいた。
「斗真、どうしてあの場に……?」
斗真は頭を掻いて、私の隣に座った。
「気づいてたんだよ、あいつがお前のこと追いかけてるの」
「……え」
「だから俺もお前のこと追っかけてた。まあ、時間があったときだけだったから、今日居合わせたのは、本当に偶然だ」
真治は私のことを……ストーカーしていた?
斗真が私の肩を抱いた。
「香璃が無事で、本当に良かった……」
そこで、私は斗真が小城君に言っていた言葉を思い出した。
「と、斗真……、小城君に言ってたのって……」
斗真は私を見つめる。真剣な瞳に、私は口をつぐんだ。
「香璃、好きだ」
「……え」
「なんで気づかねえんだよ、お前」
あんまりな斗真の言い分に、私は思わずかっとする。