似非恋愛 +えせらぶ+
「大体、本当に幼馴染みでいたいなんて思ってんのか? 俺はごめんだ」
私は……。
「俺は、香璃のことが好きなんだ。今度こそ、手放したくない」
私も……。
「私も、斗真が好きっ……!」
目から涙がこぼれる。私はココアのカップを机に置いた。
「遅ぇよ」
ぼろぼろ涙が出てくる。安心したからか、なんなのか、よくわからない温かい涙だった。
「だって、斗真、何にも言ってくれないし……付き合ってるふりって言われて、好きになっちゃいけないって思ったし、何より、付き合って別れなくちゃいけないのが嫌で」
「なんで別れる前提なんだよ、馬鹿」
斗真が私の涙を指でぬぐってくれる。
「だって、今まで、続いた恋がなくて……っ」
「そんなの、俺とじゃなかったからだろ」
「私の前からいなくなったくせに……!」
そう、今やっと気づいた。
なんで私が斗真のことを、斗真に近づくことを恐れていたのか。
「斗真は、私を置いて、いなくなったくせに……」
斗真のことが好きで好きで仕方がなかったあの時、斗真は私の前からいなくなった。
そのことが、私も自覚しないうちにトラウマになっていたんだ。