似非恋愛 +えせらぶ+
フェーズ2

当惑


 翌営業日、出社してきた私を、みあが心配そうな顔で出迎えた。
 心配するのも当然だろう。みあにとっては初対面の男に私を預けたのだから。

「おはようございます。香璃さん、あの、あのあと大丈夫でした?」
「おはよう。ええ、大丈夫。心配かけて、ごめんね」

 明らかに不安いっぱいの表情を浮かべたみあに、私は苦笑した。
 後輩に、こんなに心配をかけてしまって本当に申し訳ない。

「本当に大丈夫、斗真の家に泊めてもらったから」

 私が何気なく告げると、みあが目を丸くした。そして、困ったように眉尻を下げた。

「え、えっと……」

 そんなみあの様子に、私の方がきょとんとする。そして、いい年をした男女が一つ屋根の下で過ごしたということが『大丈夫』かと言われれば、あまりそうでもないような気がしてきた。
 実際に『何か』があったのは事実なのだから。

 しかし、そんなことはみあに伝えなくていい。そして、伝えたくない。
 そして、自分のことのように心配してくれるみあの様子が可愛くて、私は微笑んだ。

「なんにもなかったから、安心して。私達、ただの幼馴染なのよ?」

 そう口にして初めて、胸の奥に小さな痛みが走った。

 みあに嘘をついている罪悪感。
 ただの幼馴染である斗真と関係を持ってしまった罪悪感。

 その痛みを、私は押し隠す。

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