似非恋愛 +えせらぶ+

 それでも――……。

 ただ一つ救いなのは、斗真も私を利用しているってことだった。
 この関係を利用しているのは、私だけじゃない。

 そう、割り切るしかないのだ。
 私達はそういう、関係を選んだ。

 一息ついた私は、気を取り直して仕事に戻った。

 * * *

 その後は、スマホを鞄にしまって極力意識しないようにした。

 不思議と冷え切った私の心が、私の意識を仕事に集中させた。お蔭で仕事がはかどったものの、こんなのはこちらの精神衛生上よろしくない。

 仕事に没頭していた私は、ふっと気づいて時計を見る。すでに二十時を過ぎていた。
 はっとしてスマホを確認すると、未開封メールが一件と、不在着信が一件。

 私は急いでメールを確認した。

【送信者:後石斗真
 本文:仕事二十時くらいに終わる。その後なら】

 不在着信も斗真からで、その時間を見れば、十分前だった。そのとき、タイミングよくスマホのバイブレーションが震える。発信者は斗真だ。私は慌てて電話に出て、立ち上がった。

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