似非恋愛 +えせらぶ+

 馬鹿みたいに思い悩んで、返ってこないメールの意味を考えていた。
 会いたいといえばいいのに、それがなぜかできなくて、悶々とした日々に加え、仕事も要件定義が進み、顧客とのやり取りに疲れ切っていた。

 せっかくの金曜だ。休日出勤の予定もない。思い切り呑んで、発散したかった。

 予定帳を見るが、今日は特に飲み会の予定はない。一人で飲むより、誰かと飲みたい気分だった。
 私はみあの席に近づく。どうやら、話しかけても大丈夫そうだ。

「みあ? 話しかけて大丈夫?」
「はい」

 手を停めて、みあが私を見る。この子はやっぱり猫みたいで可愛い。

「業務とは関係ないんだけど、今夜空いてたら、飲みにいかない?」

 誘ってみると、みあが申し訳なさそうな顔をするので、応えがわかってしまった。
 なんだ、先約があるのか。

「ごめんなさい。今日は陣と約束があるんです」

 律儀に誰との用事か伝えるあたり、みあらしい。それにしても、氷田君と、か……。

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