似非恋愛 +えせらぶ+
「あの2人は……付き合っているのよね?」
「さあ。俺には陣の片思いにも見えるがな」
斗真の意外な言葉に、私は目を丸くする。
「私には、みあも氷田君のことを好きに見えるけど……」
「放っておけよ、他人の色恋沙汰に首突っ込んでも面白くねえだろ」
斗真に言われ、私は口をつぐんだ。
そうだ。みあ達にはみあ達の事情があるのに。
私だって、斗真との関係を詮索されたら困るくせに。
みあのことを気にする自分が、醜くて嫌になった。
ぼんやりとしていると、いつの間にか斗真の家についていた。
「ぼうっとしすぎ」
「え」
部屋に入った途端、斗真が唇を重ねてきた。
「俺といるのに、他のことなんか考えてるんじゃねぇよ」
久しぶりの感覚に、私の脳みそが一気に痺れていく。
私は鞄を投げ出して、斗真の首に手を回していた。