似非恋愛 +えせらぶ+

 * * *

 目を開くと、私はいつの間にかベッドにいた。ご丁寧に、斗真の腕枕で。
 身動きせずに横目で斗真を見れば、まだ眠っているようで、寝息が聞こえてきた。

 私は、じっと斗真の顔を見つめた。

 悔しいくらいに長いまつげに、高い鼻。ちょっと薄めのピンクの唇。肌だって、きめが細かくて白くて柔らかい。
 整った顔をしているから、昔から女の子にもてていた。

 昔から斗真のことを見ていたけれど、斗真の瞳に私が映ったことはなかった。

 昔も、今も。

 斗真が私のものになることなんて、ない。

 それでも、隣にいてくれる。
 この温もりを、今だけは感じていたかった。

「ん……香璃……」
「っ」

 身じろぎをした斗真が、薄目を開けた。見つめていたことに気付かれたかと思い、どきりとした。
 しかし斗真は私を抱き寄せて、私の首元に顔をうずめた。そして、そのまま寝息をたてはじめた。

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