似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
あの日斗真と交わった日から、私はまた斗真と連絡を取れずにいた。
会いたいと言えば、また身体だけの関係を求めてしまうに違いないから。
その関係から、抜け出したかった。
それでも、斗真に会いたくて仕方なかった。
スケジュールを確認しながら、私は各チームメンバーの進捗を確認し、遅れを確認していた。
今のところ、大きな問題は発生していないが、一部要件が顧客持ち帰りになっている箇所があり、そこが心配だった。あとで連絡をしようと思い、ふっと顔を上げると、みあの顔が目に入る。心なしか幸せそうな、みあの顔が。
そんなみあを見るたびに、私の心の中で嫌な気持ちが膨らんでいくのがわかる。
否応なしに苛々していく私は、眉間にしわを寄せてディスプレイに向かっていた。
仕事は待ってくれないのに、集中できない自分にも苛々していた。
「おーい、篠っち、どうした?」
「え?」
突然声をかけられ、私は、怪訝な声を出して振り返った。そこには板チョコを持った木戸さんがいた。
私のあからさまに不機嫌そうな声を聞いた木戸さんがさらに苦笑を深くする。
「おいおい、ほんとご機嫌斜めじゃないか。機嫌が悪い日があってもいいが、ほどほどにな」
後半は、私にだけ聞こえるように木戸さんが注意してくれた。私は反省し、深呼吸をする。