似非恋愛 +えせらぶ+

 ちょっと待って。
 どういうこと?

「じゃあ、佐川ちゃん、明日よろしくね」
「……はい」

 木戸さんが意味ありげに言えば、みあが照れくさそうに木戸さんに応えている。

 ちょっと、どういうこと?
 みあには、氷田君がいるんじゃないの?

 訳がわからず、私はさらに混乱する。

 それなのに、木戸さんとデート?

「ごめん、ちょっとトイレに行ってくる」
「あ、はい」

 私は、モヤモヤする心をいったん落ち着かせるためにトイレに向かった。

 鏡の前に立った私の顔は、はた目にもひどいものだった。
 木戸さんが声をかけてきたのもうなずける。

 みあはこの前も氷田君とデートしていたはずだ。
 だけど、今度は木戸さんとデート?

 本当に、どういうこと?


 みあのことは、入社当初から知っている。
 仕事も一生懸命で、とても誠実な子だった。

 そんなみあが、二股?

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