似非恋愛 +えせらぶ+

 止められなかったのだ。
 自分が、うまくいかない恋愛をしているせいで。

「ほんと、最低よ。男の気持ち弄んでるんじゃないわよ」

 みあを、傷つけるような言葉を、平気で言える、醜い女に成り下がっていた。

 真っ青になって私を見ているみあは、何も言わなかった。
 それを肯定と受け取った私は、みあを睨みつける。

 しばらくそうやって見つめ合っていた私達だったが、みあが口を開いた。

「私、陣とは付き合っていません。木戸さんとも」
「え?」

 吐き出すように紡がれた言葉に、私は間抜けな声をだした。
 みあがそっとため息をつく。その顔に、自嘲気味な笑みが浮かんでいた。

 その、寂しげで、辛そうな笑みに、私は何も言えなくなった。

「香璃さんの言うとおり、私は最低な女です」

 みあは、諦めたような穏やかな声で続けた。

「大学時代、陣のことが好きでした。ずっと。でも……陣に彼女がいると知っていながら、私達は過ちを犯したんです」

 それは、みあの告白だった。





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