似非恋愛 +えせらぶ+
フェーズ4

告白


「陣と出会ったのは、大学に入学してすぐのことでした。私は彼に……一目ぼれしたんです」

 静かで、落ち着いたみあの声に、荒れていた私の心が次第に落ち着いてきた。
 みあは目を伏せ、何もかも悟ったような顔をしていた。

 そういえば、みあはいつも何かを諦めたような、年齢の割に落ち着いた子だった。
 もしかして、その原因がこの話の中にあるのだろうか。

「最初は、ただの憧れでした。遠くから彼を眺めているだけでよかった」

 当時を思い出しているのか、みあは少しだけ、ほんの少しだけ口元に笑みを浮かべる。でもそれは、やはり自嘲の笑みに見えた。

 今にも消えてしまいそうな、儚い笑みだった。

「何がきっかけだったでしょうか。同じ授業をとっていた私と彼は友達になりました。
 友達になった日から、私達はよく一緒にいるようになりました。話が合って、気が合って、一緒にいるのが心地よかった。
 そんな時間を過ごしているうち、私はどんどん彼に惹かれていきました」

 情景が、目に浮かぶようだった。
 今よりも若いみあが、遠くから氷田君を眺めている様子。

 初々しい二人が出会い、同じ時間を過ごすことで、順調に恋心をはぐくむ様子が。

 とてもお似合いの二人に見えたから、その情景が簡単に思い浮かんだのだ。

 でも、みあ、どうしてそんなに、悲しい顔をするの……?

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