似非恋愛 +えせらぶ+
「ある日、私は……陣に遠距離恋愛中の彼女がいることを知りました」
冷たいみあの言葉に、私は胸の奥を氷の刃で突き刺されたような衝撃を覚えた。一瞬、息ができなくなった。
「その時、私は恋心を封印したんです。陣は友達だと。大事な友達だと、必死に自分に言い聞かせていました。
でも、駄目でした」
みあ……。
「一緒にいるうち、どんどん距離が縮まって……それは、陣も同じで……」
みあの、目を伏せたままのまつ毛が震えている。今にも泣きだしそうな、震える声だった。
「私達は、ある日、一線を越えました」
みあの声からにじみ出る深い後悔に、私は心がえぐられるような思いをした。
目の前が、真っ暗になるようだった。
「友達だからそばにいるのだと自分に言い聞かせて、友達以上の関係を続けていたんです。事情を知らない周りの人は、私達が付き合ってるものだと思うほどに、一緒にいました」
みあの想いを知るほどに、苦しくなる。息が、できなくなる。
同時に、氷田君への怒りにも似た思いが生まれてしまう。
それは私が女で、みあに感情移入しているせいだろうか。