似非恋愛 +えせらぶ+
私は隣で突っ伏している男性をまじまじと見つめる。
見れば見るほど、私の知っている誰かと、目の前の男性の姿が重なる。
遠い昔においてきたはずの、記憶の中の彼と。
「香璃さん?」
絶句して固まっている私に、みあが首をかしげた。はっとした私は、氷田君を見た。
「ごいし、って……後ろの後に、石? とうまは、北斗七星の斗に、真実の真?」
「そうですけど……お知合いなんですか?」
困ったような、驚いたような氷田君の言葉に、私は何とも言えずに、隣の人物に視線を戻した。
「ご、ごめんなさい。あまりにも驚いたものだから……。えっと、同一人物なら、彼は私の幼馴染なんだけど……」
「えっ、幼馴染!?」
みあが素っ頓狂な声を出す。無理もないだろう、私も驚いているのだから。
「んっ……」
身じろぎをした彼が顔を上げ、訝しげに横目で私を見た。
その目を見た瞬間、確信した。
間違いない、これは斗真だ。高校の時にスウェーデンに引っ越してしまったはずの幼馴染の斗真だ。