似非恋愛 +えせらぶ+
「みあ……」
思い返せば、氷田君との関係を問われるたびにみあは困ったような顔をしていたのだ。
無神経な私は、それを照れているのだと勘違いしていた。
「陣は彼女と別れたそうです……私のために。そして、私と友達からやり直してほしいってお願いしてきました。正直、戸惑いました。私の心の中はぐちゃぐちゃの大混乱を引き起こして」
いつの間にか、私の瞳から涙がこぼれていた。
「でも今は、陣ときちんと向き合おうと思っているんです。自分の気持ちの整理はついていないけど……って、香璃さん、なんで泣いてるんですか!」
みあの強さに、涙が出てきた。
無神経な私の言葉に、みあはどれだけ傷ついていただろう。
氷田君と別れる決心をしたみあは、どれだけ強かったんだろう。
こんなにも辛いことがあったと、周りに悟らせることなく働いてきたみあは、どれだけ葛藤してきたのだろう。
「香璃さん、泣かないで……香璃さんが泣くことじゃ……」
「みあ……っ、ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……」
斗真と偽りの関係を続けている私が、こんなにも葛藤して、それでも氷田君や木戸さんに向き合おうとしているみあに口出しできる立場じゃなかった。
斗真とも、自分の気持ちとも向き合わないで、みあに嫉妬を覚えていた自分が醜くて、汚くて、本当に嫌になった。