似非恋愛 +えせらぶ+
なんて、惨めなのだろう。
思えば最初から、慰めてもらっていたのは私だけだった。私が斗真から呼び出されたこともなかった。
あれだけ見た目のいい斗真のことだから、他の女の子が放っておくはずがなかったんだ。
ひっきりなしに鳴っていた電話が、途切れた。
不思議と、涙は出てこなかった。ただ、真っ白な頭で速足で歩いていたら、人とぶつかってしまった。
「ごめんなさい……っ」
「香璃?」
名前を呼ばれて驚いて顔をあげたら、そこには当惑顔の真治がいた。
嘘……でしょ……。
なんでこんなときに、再会するんだ。
ただでさえ混乱していた私の脳みそは完全に機能停止する。
「しん、じ……」
「真治、どうしたー?」
仲間と一緒にいたのか、真治の連れが声をかける。すると、真治が私の腕をつかんだ。とっさのことで、振り払うこともできなかった。