似非恋愛 +えせらぶ+
「悪い、ちょっと用事できた。埋め合わせは今度するから」
「え?」
真治の友人らしき人物は、真治と私を交互に見て冷やかしの笑みを浮かべる。
「わかった。またなー」
「ああ、ごめん」
遠ざかっていく真治の仲間達を呆然と見送った私は、はっとして真治を見る。
「放して」
「そんな顔してるのに?」
ひどく落ち着いた、低い声にびくりと身体が震えた。
私は、今、いったいどんな顔をしているというのだろうか。
「……どういう……顔?」
「今にも消えちゃいそうな顔してる」
おどけたように言った後、真治は急に真剣な顔をして、ごめんと小さく謝った。
「どこか、話せるところに行こう」
呆然としている私の手を真治が引く。
「ま、待って、私は話すことなんて……」
「俺が話したい」