似非恋愛 +えせらぶ+

「……気になんのか?」
「気になるよ。だって、私、今の斗真のこと何も知らない」

 タオルの隙間から、斗真の喉仏がのぞき見えた。色っぽくて、思わずなぞりたくなる鎖骨も。

「同じ職場の3年目の子だよ。俺に懐いてる」
「ふうん、やったじゃない」
「お前もいるだろ、慕ってくる後輩」

 斗真に言われて、真っ先に島田の顔が浮かんで笑ってしまった。

「ちょっと憎たらしい後輩ならいるわ。慕ってくれるのは、みあくらいよ」

 髪がほとんど乾き、斗真がタオルを置いて私の身体を引き寄せた。その端正な顔が私の髪の毛に近づく。

「変な感じだよな、同じシャンプーの臭いとか」
「そうね」

 こうして近くにいるのに、不思議とそういう雰囲気にならなかった。私は真っ直ぐと斗真を見つめる。
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