似非恋愛 +えせらぶ+


 私は少しだけ笑って、斗真に寄り掛かった。

「ほんと……この仕事してるといつも思うの」
「ん?」

 斗真が私の髪を指に巻きつけて弄ぶ。それが、心地よかった。

「ほらこの仕事ってさ、要件定義でお客さんと要件つめてさ、ちょっとそこで揉めることもあるし、要件決まったあとで、開発の途中やテストの途中でも、ちょっと揉めることもあるけど……自分達とお客さんと一緒に作り上げて、最後まで進められるじゃない? おおかた、決められた道筋通りに」
「まあ、そうだな。それにしても、うまくいかないことも多いけどな」

 私の言葉に斗真が苦笑する。

「そうだね。でも、人生ほどじゃない」
「……香璃?」
「人生って、びっくりするほど、うまくいかない」

 本当にうまくいかない。
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