ボクはボクでも、僕じゃない。



・・・貴斗・・?


僕は見向きもしない女性の横顔を黙って見つめた


その瞬間

一際大きな痛みが頭を打ち、僕はその場に踞った


『・・う・・・っ』


なんだ これ

今までこんなに痛んだ事はなかった


ガクガク膝が震え、少しずつ意識が遠のいてゆくと

視界に白いハンカチが入って来て、そして僕の額を拭った



「・・大丈夫ですか?」


肩で息をしながらゆっくり顔を上げると、そこには涙を流す女性がいた

僕と同じ高さに屈み、悲しそうに眉を垂れさせて


『・・・君は、大丈夫なの?』

「・・・・・」


きゅっと唇を噛みしめ、下を俯く彼女

そこからポタポタっと涙が落ちた



『・・・・』


自然と手が伸びて、彼女の頬を撫でる

すると突然、彼女は僕に抱き付いてきた



「うっ・・・・うああああああっ」


大きな 大きな 叫び


悲痛の叫び


悲鳴にも似たその声に、行き交う人は眉を寄せる



それでも彼女は、泣くのをやめなかった



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