赤い月

小山薫の両親は、オニに喰われた。

身寄りがなくなり、秋時に預けられて慈龍寺にやって来たのは、10才の時だ。

薫の心は閉ざされていた。
食事も満足に摂らず、一日中部屋の隅で蹲り、茫然と過ごす日々。
そんな時、いつも傍にいたのは景時だった。

何を話すわけでもなく、ただヘラヘラしながら隣に座っているだけ。
何度追い払っても離れていかない。
声を荒げてもヘラヘラ笑ったまま。
殴ろうとしても、チョロチョロ逃げてはいつの間にかヘラヘラ戻ってきてしまうので、とうとう追い回す羽目になった。

走り、隠れ、木に登り、子供らしく日が暮れるまで鬼ごっこ。
疲れれば腹も減るしよく眠る。

薫に笑顔が戻るのに、時間はかからなかった。

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