赤い月
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景時の母、秋時の娘である高杉千景(タカスギチカゲ)は、愛らしい少女だった。
だが自分の容姿には全く無関心で、子供の頃には年上のイジメっ子に喧嘩をふっかけて泥だらけで帰ってくるなど、ヤンチャで正義感の強い子だった。
そのまま竹のように真っ直ぐに育った千景は、オニからヒトを守るため、秋時の制止にも耳を貸さず当然のようにオニ狩りになった。
他の僧たちに迷惑をかけることも少なくなかったが、素直な人柄のおかげで、皆が彼女を暖かく見守り手を差し伸べた。
彼女の周りには自然に人が集まった。
初めは反対していた秋時も認めざるを得なくなり、慈龍寺には笑顔が溢れた。
危険と隣り合わせでありながらも穏やかで暖かい日々が、ずっと続くと思われた。
だが、運命の歯車は回り出す…