赤い月

千景ならば不可能ではないのかもしれない。

しかし、秋時は反対した。
今回は、仲間の僧たちも秋時の肩を持った。

可能、不可能の問題ではない。

相手はオニなのだ。

今は大人しくしていても、いつ牙を剥いて襲いかかってくるかわからない。
ヒトを殺したくないなんて、どこまで本心かわからない。

それ以前に、大勢のヒトを喰らってきたオニを、救う必要がどこにある?


─ただヒトを喰らうだけのオニ なら、狩るわ。
 でも彼は苦しんでた。
 泣いてたの。
 救いを求める手を振り払うこ となんて、私にはできない。


寺中の非難の声にも、千景は揺るがなかった。

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