赤い月

呪術はほどなく完成した。

血の契約を交わせば、オニは術者の精を吸って生きられる。
二人が共にある限り、オニが飢えることはない。

千景はすぐに、オニに術を施した。


─ずっと一緒に生きていくつも りか?!


術の内容を知った秋時は激昂した。


─なにかあったら私の責任だも の。
 私が彼を見守っていくわ。


千景は偉大な行者役小角に倣い、オニを『ゼンキ』と名付けた。

秋時や仲間たちの不安や困惑をよそに、一人のオニ狩りと一体のオニは、いつも寄り添いながら過ごし始めた。

< 120 / 170 >

この作品をシェア

pagetop