赤い月
『闇』の結晶であるオニに、命を宿し育む能力などない。
だが、欲を吐き出すことはできる。
オニが欲望のままに人間の女を犯し、孕ませる。
そして生まれるのがオニの子…『赤光』だ。
『赤光』は、幼い頃はヒトの子供となんら変わりなく成長する。
姿形もまるっきりヒト。
もちろん角も生えず、鬼気もない。
ただの愛らしい幼子だ。
だが、子供はいつまでも天使ではない。
兄弟や友達に対する、嫉妬やちょっとした意地悪な心が芽生えだす頃…つまりは小さな小さな『闇』を内包した最初の新月の夜に、それを呼び水としてオニから受け継いだ巨大な『闇』が目醒める。
オニから直接与えられた『闇』に抗えるヒトなどいない。
闇に、狂う。
そして、闇夜に狂った赤い月が生まれる。