赤い月

それをわかっていながら…


─…生めるわけ、ないだろう?
 誰からも祝福されない子を…


いつしか秋時は、落としたバジュラにも気づかず拳を固めて項垂れていた。


─私が祝福するわ。


─俺ガ祝福スル


千景とゼンキの声が重なった。


─お父さん、言ったよね?
 お母さんは私を生んで亡くな ったけど、お父さんとお母さ んが愛しあった証を残せたん だから、きっと後悔してない って。
 私達も、一緒よ。
 愛の証を残したい。
 同情や感謝じゃない。
 種族は違うけど、愛しあって るの。


─…ゼンキはオニだ。


─でも、ヒトを想う気持ちを持 ってる。
 だから泣いてた。
 苦しんでた。
 私やお父さんと何が違うの?


─…子供もオニだ。


─大丈夫。
 この子は守ってみせる。
 生かしてみせる。
 どんな犠牲を払っても。


─千景ト俺タチノ子ニ、俺ノ全 テヲ捧ゲル
 元々、千景ガ繋イデクレタ命
 惜シクハナイ

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