赤い月
「だって!!
母さんはオニに喰われて死んだんだ!!
あのオニが、ソイツだったってゆーのか?!」
激昂した景時の悲鳴のような声が、本堂に響き渡った。
だが秋時は今夜の月のように穏やかなままだった。
「落ち着け。」
「落ち着け?
どーやって?
俺を妊娠したから母さんは…」
「落ち着け。」
「俺が生まれてこなければ…
もしかして…
母さんは俺のこと…」
景時は何かに気づいたように顔を上げ、秋時を凝視した。
彼の顔は苦痛に歪み、瞳には切なさを宿していた。
「もしかして…
もしかして…
…
ジジィも俺を憎ん」
「黙れ!!」
今度本堂を揺るがしたのは、秋時の咆哮だった。