赤い月
景時の視界を歪ませていた涙が頬を伝い、目の前が開けた。
厳しさと愛しさを滲ませた、祖父の眼差し。
その向こうに広がる、幼い頃から遊び、慣れ親しんだ寺の境内。
空には、どこまでも優しく穏やかな月。
「そっか…
俺、愛されてンだ…」
秋時の目尻の皺が深くなり、口元が綻んだかと思うと、景時の頭は骨ばった手で押さえつけられた。
「ぉぅわっ」
そのままグリグリと赤い頭を掻き回される。
「景時はイイコだなぁ。
今度不安になったら、オジィチャマが添い寝して、眠るまで歌を歌ってやろうなぁ。
ハハハ。」
あからさまなガキ扱いと、その扱いが相応しい自分の幼い短慮を恥じて、景時の頬が熱を持つ。