赤い月
「や、勘弁してクダサイ。」
「なんだ?
そうか、抱っこのほうが好きだったよなぁ?」
「ま じ で !!
勘弁してクダサイ。」
やっと頭を解放され赤くなった顔を上げると、秋時が意地悪そうに笑っていた。
そして懐から紙を取り出し、景時に向かって無造作に投げた。
「っと。
ナニ? コレ?」
「やるよ。千景の手紙だ。」
「え。」
拾い上げた紙を、思わず両手で握りしめてしまった。
「おまえが寺を抜け出したりしなきゃ、二十歳になった時にでも話すつもりだったんだよ。」
お猪口の酒をクイっと飲み干した秋時が、横目で睨む。
その視線に景時は首を竦めた。
「ホント、ゴメンナサイ。」
「おまえの加護と千景がオニに喰われた話も、たぶん無関係じゃない。
普通に襲われて、傍にいたガキのおまえが生きてるはずがねぇ。」