赤い月
「…」
またも強張る景時の顔を、秋時は真摯な目で覗き込んだ。
「おまえは真実を知ってるはずだ。
父のことも、加護のことも、両親の最期も、おまえが失った記憶の中にある。」
「…大丈夫。
思い出しても受け止められる。
俺、アホじゃねぇし。」
強い光を秘めて見つめ返した景時の瞳を見て、秋時は笑った。
「いやいや、まだまだアホだろ。」
「アホじゃねぇったら。」
「そぉかぁ?
どぉ見ても高嶺の花に、『君が好きだから』とか公開告白しちゃうのにぃ?」
「ぅぇい??!!//」
狼狽えて、手にした酒を一気に煽ろうとする景時を、秋時は座ったまま器用に足を伸ばして蹴った。
「げふっっ」
「あんなに盛大にフラレたクセに、追いかけるつもりなんだろ?
おまえ。
アホだから。」