赤い月
景時は真っ赤になって咳こみながら、意地悪そうにニヤニヤ笑う秋時を睨んだ。
「…悪ィかよ。」
「…いーンじゃねぇの?」
「へ?」
「おまえも…
おまえの心のままに生きろ。
その為に生まれた命だ。」
心のままに。
柔らかい微笑みからは想像できないが、その言葉を言える迄に、どれほどの葛藤とどれほどの後悔を秋時は乗り越えたのだろう。
景時は目を閉じて、その重みを、その温もりを、全身で感じた。
繋がれた命。
紡がれる言葉。
──愛されている。
瞼を開けると、さっきと変わらない秋時の微笑みがあった。
いつもはこんなコト、恥ずかしくて言えねぇケド。
面と向かって言うのは、照れ臭いケド。
返す言葉はコレしかねぇっしょ。
万感の思いを込めて。
微笑みと共に。
「ありがとう。」