赤い月
──お父さんへ──



お父さんへ


お父さん

景時と一緒にこの手紙が
お父さんの元に届いたとしたら
私の作戦は
大成功と言ったところ


勝手にお父さんの名前
息子に使っちゃって
ゴメンね

生まれた時
あまりにもお父さんに似てて
本人にしか見えないとか言って
ゼンキが名付けたの

カッコイイでしょ?

お父さん

私たちが
この子を守るって言ったコト
覚えてる?

言葉通り
私とゼンキがずっと一緒にいて
一つになって
景時を守っていくことにしたわ

後悔はないわ

私もゼンキも
この為に生まれてきたんだと
思えるの

景時はもう オニじゃないわ

でも… ごめんなさい

私たちは
もうお父さんには会えないわ

景時とも
一緒にいるケド
一緒にはいられない

お父さん

お願いがあるの

たくさん心配かけて
怒らせて
家を出てしまって…

図々しいとは思うケド
私の最後のお願いです

景時を頼みたいの

普通より少しだけ
重いものを背負ってしまう
私たちの宝を
お父さんに預かってほしいの

お父さん

お父さんが反対していたことは
わかってる

でも
景時は本当に優しい いい子よ

私の息子だから
当たり前なんだケド

この子の笑顔を守ってやって?

景時も
お父さんを
笑顔にしてくれるはずよ

お父さん

わがままばかり言って
本当に ごめんなさい

でも 私は幸せよ

愛する人に愛されて
愛する人の子供を生んで
愛する人とずっと一緒に
愛する息子を守り続ける

きっと
世界中の誰よりも幸せ者よ

いつかお父さんも
わかってくれると信じてるわ

お父さん

大好きよ

愛してくれて ありがとう


大事なこと忘れてたわ

景時が大きくなって
夜遊びするようになっても
新月の夜だけは
殴ってでも
家に閉じ込めておいてね?

どうしても新月の夜は
術の効きが甘くなっちゃうの

本当は
夜遊びなんてしない子に
なってくれればいいンだケド
お父さんの血も引いてるから
その辺りは すごく心配

景時に
変な遊び教えないでね?

お父さんも
キャバ嬢侍らせて
深酒ばっかしてちゃダメよ

もういい年なんだから

身体には気をつけて ね


            千景



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