赤い月
無謀といえば無謀。
景時が彼女に初めて出逢った日から約ひと月。
彼らの目に映る範囲どころか、人間の手の届くところにいる可能性すら、皆無に等しい。
鬼神といえば、一夜で千里を駆け、万里を飛ぶとも語られる、超生命体なのだから。
だが夜空を眺めて祈ることしかできなくとも、景時に諦める気はない。
あの夜の姿のままの彼女が再び舞い降りる日を、何ヵ月でも、何年でも、何十年でも、空を見上げて待てる気がする。