赤い月
訪れた静寂。
優しく光る満月。
圧し潰されそうな鬼気も嘘のように消えたのに。
景時は呼吸を忘れたまま、動けずにいた。
彼女を見つめたまま…
しなやかな肢体。
少女のように細い手足。
遊女ばりに着崩した赤い着物の襟元から、華奢な肩と鎖骨が覗く。
片手で捻り潰せそうな首に乗った、小さな美しい顔。
雪を欺く白い肌。
ルビーのように輝く大きな瞳。
幼い面差しなのに、冷めた表情や厚めの紅い唇でやけに妖艶に見える。
膝まで届く、銀の髪。
柔らかい曲線を描く、二本の赤く細い‥‥‥角。