赤い月
女は軽く溜め息を漏らし、形の良い眉を顰めた。
「何故、去らぬ?
妾も狩る気か?」
身の程知らずが、とでも言いたそうな蔑んだ声の響き。
それでも自分への問いかけだと思うと、景時は体温が急上昇するのを感じた。
「君… 名前は?」
掠れた声。
いつもの軽口が叩けない。
俺のヘタレ!
これじゃまるで初めてのナンパじゃねーか!
「…名を問うなら、まず己が名乗るのが礼儀であろう。」
ハイ、ソーデス、オッシャルトーリ。
「…高杉 景時。」
自分のダメっぷりに気が抜けて、やっと体が動き出した。
項垂れ気味に、赤い髪を掻き上げながら立ち上がると、目の前に女がいた。