赤い月
今夜は新月。
景時にオニ狩りの仕事はない。
子供の頃から『おまえは雑念が多すぎる』と、新月の夜には一人本堂で瞑想することを秋時に命じられているのだ。
大の字になって眠っていたり、マンガを持ち込んだりして叱られることはよくあるが、脱走を試みたことは一度もない。
障子に影を写す見張りの僧も、そういう意味では油断しているだろう。
(いっちょ、やっちゃう?)
ジーンズのポケットの中にバイクのキーを確認し、景時は不敵に片方の口角を上げた。