赤い月





…や、ウソデス。
頑張りマス。

暖かな思い出をかき消すように心を占拠した面影に、景時は慌てて言い訳した。

冷ややかなルビーの瞳。
蔑むように歪む口元は、今にも「阿呆」とのたまいそうだ。


(…罵られンのって、クセになるかも…って俺、変態?)


絶望的な状況なのに、笑いがこみ上げてきた。

近くにオニの気配を感じる。

もう動けない。

でも、まだ死ねない。
まだヤれる。

血溜まりに伏したまま、もう一度バジュラを握り直した。

もう少し。
もう少し。
近づいて来い…

イけるところまでイってやる…

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