赤い月

カシャーン

天井付近でガラスが割れるような音。

オニが、闇が、空気までもが、緊張を孕み動きを止めたようだった。


「今宵は闇が騒ぐと思えば…
狂った赤い月が出ておったのか。」


…あ…

景時は身を震わせた。

聞き違えるはずがない。

この声、この響き…

彼女だ…

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