赤い月

焦らずジワジワと指先から動かし、損傷部を確認していく。

内臓や腱は無事のようだ。
肋骨は数本イってるみたいだが、ひび程度だろう。
身体中にある裂傷の出血も、彼女の言葉通り完全に止まっている。
倦怠感の要因は貧血だ。

…生きている。

胸にかかる絹のような銀髪を掬い取って、景時は目を閉じた。

君に喰われて、死ぬ。

覚悟した。

でも心のどこかで。
ほんの少しだけ。

目覚めた時に、隣に君がいるような気がしてた。

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