赤い月

景時の胸は、無性に痛んだ。


「…泣いてもいいよ…?」


思わず口をついて出た景時の言葉に、彼女は微かに身を強張らせた。

何が彼女を悲しませているのか。
俺の向こうに誰を見ているのか。

そんなコトはどーでもいい。
…いやいや、ほんとは知りたいけども。
ほんとはスッゲぇ気になるけども!

彼女がこんな顔しなくてすむのなら、この際どーでもいいコトだ!

景時は手を伸ばし、彼女の滑らかな頬にそっと触れた。


「俺が傍にいるから。」

< 67 / 170 >

この作品をシェア

pagetop