赤い月
赤い瞳が揺れたのは、一瞬だった。
「…
憐れな。
頭でも打ったか。」
悲しみも動揺もなかったかのような冷たく澄んだ瞳に戻り、彼女は景時の手を払い退けた。
「そなた、寺に身内はおるのか?」
「へ?
あー…ジジィが…」
「そうか。
では、ゆくぞ。」
「え?
ゆくぞって… どこゆくの?
…って、ぅえぇぇぇ?!」
フワリと躰が宙を舞い、視界が反転した。
彼女が景時の腰に手をかけ、軽々と持ち上げ肩に担ぎ上げたのだ。
華奢な外見からは想像できないそのチカラ。
オニであれば当然なのだが…
「いやいやいやいや!
俺、重いから!
大丈夫だから!
歩くから!!」
「暴れるな。
そなたはまだ動けぬ。」