赤い月
(いや、動く!
意地でも動く!
動いてみせる!!)
こんなのはイヤだ。
逆シチュエーションでやり直させて。
俺に彼女を担がせて。
いや、寧ろ姫だっこさせてー!!
彼女は混乱気味の景時を風船であるかのように肩に乗せたまま、工場の端まで滑らかに歩みを進める。
「あっ バイクあるンだ。
それがムリなら、ケータイで迎えを…」
壁に手を当て軽く押すような仕草をしただけで、分厚いコンクリートの壁が吹き飛んだ。
「…」
「面倒じゃ。黙れ。飛ぶぞ。」
あぁ、なんて容赦ないチカラ。
なんて容赦ない単語のみのお言葉。
「…ハイ。」